絵画からその当時の様子を知る

現存する昔描かれた絵画は芸術品としての対象であるとともに、描かれている内容から当時の様子や使われていた調度品などいろいろなことがわかる貴重な証拠品ともなります。額縁なども現存する本体のみならず絵画に描かれている額縁からも貴重な情報がえられることはよく知られるところでしょう。例えば、ロンドンのナショナルギャラリーに所蔵されているEdouard Manet(エドゥアール・マネ)作の「Eva Gonzalès(エヴァ・ゴンザレスの肖像)」に描かれている額縁。絵画に記載されている年代から当時は以前のような金粉処理された絢爛たる額縁ではなくもっとシンプルな額縁が使い始められていたと言われていますが、絵の中で登場するご婦人が描いているキャンバスには、最初から額縁が取り付けられているばかりか、その額縁も以前から使われていた豪華な金色のものであることがみてとれます。はじめから額縁付きのキャンバスで絵を描くというのも意外なら、その額縁が旧態然としたものであることにも驚かされます。どうも調べたところでは、当時をそのまま写実したものではなく昔のたたずまいを想像して描かれたアレゴリー(象的なことがらを具体化する表現技法の一つ)ではないかと言うのが大方の見方のようです。そうはいってもその立派な額縁は初期の新古典主義のものとみられ、推測では本物を使った、今で言うところの中古品が使用されたのではと推測されています。名画と言われるものは、芸術品としての鑑賞とともに時代考証の一つともなる大事な存在であると再認識したうえで改めで見直して見るのも面白いかもしれません。